自殺 保険金 明治安田生命保険相互会社 最高裁判所 判例 払う 3年 1年

平成13(オ)734 保険金請求,債務不存在確認請求本訴,同反訴事件  
平成16年03月25日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 東京高等裁判所

H16.03.25 第一小法廷・判決 平成13(オ)734、平成13(受)723 保険金請求,債務不存在確認請求本訴,同反訴事件

大同生命保険相互会社は,平成14年4月1日,大同生命保険株式会社へと組織を変更し明治生命保険相互会社安田生命保険相互会社は,平成16年1月1日を合併期日として,前者を存続会社,後者を消滅会社とする合併をし,前者の商号を明治安田生命保険相互会社に変更し,同月5日,その旨の登記を了した。

平成7年10月31日埼玉県北足立郡吹上町所在の集合住宅用建物吹上団地3棟の中間検査に同日午後2時30分ころ,1人で上記建物のうちの1棟の屋上に上がり,同所から転落し,脊髄損傷等により死亡自殺によるものと認めるのが相当である

 上告代理人(保険金受取人)山本隆夫,同根岸隆,同久利雅宣,同増田英男の上告理由

第2事件の平成7年契約関係被上告人5社の上記保険金支払債務の不存在確認請求に係る訴えについては,第3事件の上告人らの平成7年契約に基づく保険金等の支払を求める反訴が提起されている以上,もはや確認の利益を認めることはできないから,平成7年契約関係被上告人5社の上記訴えは,不適法として却下を免れないというべきである。*

第3 上告代理人山本隆夫,同根岸隆,同久利雅宣,同増田英男の上告受理申立て理由第三について

商法680条1項1号は,保険者の責任開始後の経過期間を論ぜず,被保険者が自殺した場合を保険者の保険金支払義務の免責事由の一つとして規定しているが,一般に,生命保険契約の保険約款においては,本件と同様の1年内自殺免責特約が定められている。そして,当該生命保険契約の保険約款に1年内自殺免責特約が存在する場合には,同特約の反対解釈として,被保険者が責任開始の日から1年以上を経過した後に自殺したときには,保険者は保険金支払義務を負うことになるものと解される。これは,上記の1年経過後の自殺の場合には,保険金取得目的に出たものは一般に少なく,通常,それは,生命保険契約とは無関係な動機,目的による自殺であり,専ら又は主として保険金の取得を目的としたものとはいえないと推定されるから,これに対して保険金の支払がされたとしても,商法の上記規定の趣旨を没却するものではないとの判断によるものと解される。

責任開始の日から1年経過後に被保険者が自殺した場合であっても,保険者において,その自殺が専ら又は主として保険金の取得を目的としてされたものであることを主張し,立証したときには,同特約の存在にもかかわらず,保険者は,商法の上記規定に基づき,保険金支払義務を免れるものと解するのが相当である。

2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 商法680条1項1号は,被保険者の自殺による死亡を保険者の保険金支払義務の免責事由の一つとして規定しているが,その趣旨は,被保険者が自殺をすることにより故意に保険事故(被保険者の死亡)を発生させることは,生命保険契約上要請される信義誠実の原則に反するものであり,また,そのような場合に保険金が支払われるとすれば,生命保険契約が不当な目的に利用される可能性が生ずるから,これを防止する必要があること等によるものと解される。そして,生命保険契約の約款には,保険者の責任開始の日から一定の期間内に被保険者が自殺した場合には保険者は死亡保険金を支払わない旨の特約が定められるのが通例であるが,このような特約は,生命保険契約締結の動機が被保険者の自殺による保険金の取得にあったとしても,その動機を,一定の期間を超えて,長期にわたって持続することは一般的には困難であり,一定の期間経過後の自殺については,当初の契約締結時の動機との関係は希薄であるのが通常であること,また,自殺の真の動機,原因が何であったかを事後において解明することは極めて困難であることなどから,一定の期間内の被保険者の自殺による死亡の場合に限って,その動機,目的が保険金の取得にあるか否かにかかわりなく,一律に保険者を免責することとし,これによって生命保険契約が上記のような不当な目的に利用されることを防止することが可能であるとの考えにより定められたものと解される。そうだとすると,上記の期間を1年とする1年内自殺免責特約は,責任開始の日から1年内の被保険者の自殺による死亡の場合に限って,自殺の動機,目的を考慮することなく,一律に保険者を免責することにより,当該生命保険契約が不当な目的に利用されることの防止を図るものとする反面,1年経過後の被保険者の自殺による死亡については,当該自殺に関し犯罪行為等が介在し,当該自殺による死亡保険金の支払を認めることが公序良俗に違反するおそれがあるなどの特段の事情がある場合は格別,そのような事情が認められない場合には,当該自殺の動機,目的が保険金の取得にあることが認められるときであっても,免責の対象とはしない旨の約定と解するのが相当である。そして,このような内容の特約は,当事者の合意により,免責の対象,範囲を一定期間内の自殺による死亡に限定するものであって,商法の上記規定にかかわらず,有効と解すべきである。

その自殺に至る過程において犯罪行為等が介在した形跡はうかがわれず,その他公序良俗にかかわる事情の存在もうかがえない本件においては,その自殺の主たる動機,目的が,保険金を保険金受取人である上告人らに取得させることにあったとしても,上記特段の事

(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 横尾和子 裁判官 泉 徳治 裁判官 島田仁郎

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319124047854028.pdf