クローズアップ現代「現代型うつ」 現代型うつはただの責任転嫁。病気ではない 

クロ―ズアップ現代「“現代型うつ”にどう立ち向かうか」2011年11月22日放送

現代型うつの問題点

・仮病

打たれ弱い
怒られるだけで会社を休むのは甘え。

30〜40台の中堅にも広がる。甘え「病気を気にしないですむような生活をしたいです」(原田洋子(仮名)) 3年前発症。現代型うつとみられている。
半年前に退職。第三者は仮病と見ている。
「自分が鬱になったのは会社側に原因があると考えています。上の人達の理解が全然なくて、結構 デリカシーのないことも言われました。会社からは使って捨てられたなと。」

主治医:仮屋暢聡さん
「自分が悪くないと考えるのは、現代型鬱の共通した症状」
本人の意識の中に、非常に被害的なものが生まれてしまうように思うんですよ。それが自己中心的だったり他罰的にうつるんだと僕は思うんです。

なぜ、現代型うつの患者は、仕事の現場で追い込まれる一方、自分が悪く無いと考えるのか。

福岡の精神科病院・不知火病院の院長を務める徳永雄一郎
3000人以上の患者を見たところ、現代型うつになるのは、外からのストレスに極端に弱い傾向があると見ている。

現代型鬱の詐病人の場合、上司から叱責されたと思っている→しかし、実際の所、後から職場の方を調査すると、怒ったような状況ではなかった。

不知火病院の院長徳永さん

現代型うつになる人の多くは、子供の頃、大事に育てられ、他人に厳しく怒られた経験がない。その為、傷つきやすく、周囲から見たら全然問題ないストレス(上司の指導、顧客の要望、人事異動)であっても、深刻に受け止める。

傷つきやすい自分を守るため、無意識に原因を他人に転嫁する。

傷つくことへの恐れ、つまり、自分をすごく大事にしたいあまりに、自分の内側を棚に上げて、自分の問題を外の問題に転嫁して、相手が悪い、会社が悪いと妄想する。傷つくことを恐れるという意味での自己愛性人格障害を持つ人が最近の方に増えてきていると言えるのではないか。

IT関連会社、総務部 部長 柳田勉さん
現代型うつの広がりに悩まされている

若手社員を傷つけずに指導する研修をはじめました。

産業カウンセラー 見波利幸
職場の悩みをさりげなく聞き出す研修を管理職同士で続けている。

・最近会話してる?
・最近会話したくないんです

この会社では休職する若手社員は減っているが、焼け石に水にしかなっていない。

現代鬱に詳しい
日本うつ病学会理事長 神庭重信さん

Q.鬱と診断されてお見舞へ行くと、実は元気よく同僚と飲みに行って不在だった事例などを見ると、現代鬱は本当に病気なのか?
A.現代型うつという病名は存在しない。似た精神疾患はたくさんあるので、それか鑑別する必要がある。現代型鬱はただの現象であるが、うつ病に非常に近い症状が出ることもあれば、誰にでもあるような、心が折れて鬱状態になってる人もいるし、ただ怠けたいだけの人もいて、非常に幅広い。
一つのカテゴリにはめて皮肉な視線を向けたり、非難をしたりレッテルを貼ることは必ずしも良いことではない。

Q.これまでの鬱は、40代50代の中高年が多かったが、現代型は20代30代と、なぜ若い人が多いのか?
A.昔から鬱患者は若い人にも存在した。今は文化が日本の中で急激に変わったというのが大きく関係しているのではないか。80年代90年代は、やや脱規範的で個人の権利、自由を主張してもいい時代だった。その上少子化などで過保護な育てられ方をしている人が多い。主張をし、過保護に育てられた彼らが参入していく職場は一般社会であり、当然非常に忙しく即戦力を求められる。その過保護と一般社会のギャップにつまづいて心が折れる体験が多いのだと思います。

Q.即戦力を求められ、それに応えられないと達成感がないのですよね
A.小さい頃から色々な苦労を解決して、自分は苦労を解決する力があるんだという「自己効力感」を持っている人、苦労を解決するスキルを磨いている人ならば、職場に入って大きな問題にぶち当たっても普通に解決できる。それが十分養われていなかっただけではないでしょうか。成人として成長できていないと考えたらいいのかもしれません。

Q.そんな中で上司を突然パワハラで訴えたり、こうなったのは他人のせいだ上司のせいだと責任転嫁や妄想主張をする。本当の鬱病だと、自分を責める傾向がありましたが、なぜこのようになったのですか。
A.人を責めるのは子供の真性です。例えば、幼稚園や小学生は何か嫌なことがあればママ・友達・先生のせいにします。普通の人の場合は、成長してくると、自分を内省して、自分にも何か非があるんじゃないかということが当然分別がつくようになってきます。しかし、現代型鬱の人は人を責める傾向が増幅されています。

どうしたら治せるのか?

福岡県の精神病院、不知火病
院長 徳永雄一郎さん
患者同士が語り合うグループミーティングを治療と並行して行なっている。
欝になった原因について自白し、他人が意見を言います。
仲間の指摘だと、本当は自分が悪いということを受け入れやすいからです。
互いに攻撃し合うことで、本当の問題は、何でも他人の責任にする自分の心の弱さだということに気付いてもらうのです。

この手法を考えた院長の徳永さんによると、医者の1対1の診察よりグループミーティングの方が効果がいいといいます。

1対1でないので、大きな傷つき体験でなく。仲間同士で語りあい、傷つけあって、自分を見ながら自分を修正していく。